杉本 龍哉 四段(清水南道場)
〜2015年03月01日取得〜


『青天の朝に』


 
平成26年3月、海野師範から「来年の公認審査会は杉本先生の番だから」と声を掛けていただき、受審の決意をしてから1年。その時の気持ちを思い出そうと思っても、うまく思い出せません。そのぐらい密度の濃い一年間だったかもしれません。ただ、「大石道場の公認審査会」を汚さぬよう、「自分なりの努力はしなければ」という気持ちを持ったことは覚えています。
膝の痛みを感じながらのウォーキングから始めて、ランニングへ。夏の終わりごろからサンドバックによる息上げ稽古、最低限の基礎体力はつけないと、と思い行いましたが、想像以上の体力のなさ、自分でも情けない。それでも週2回の道場稽古、ランニングとサンドバック稽古も2回ずつ。年内にはサンドバック3分間×20セットは出来るようになり、体力的には多少の自信がついてきました。ですが、稽古内容がこれで良いのか、毎日が自問自答の日々でしたが、自分を信じてやり続けるしかないと決め、継続しました。
それに加え、年を越してから、1月から2月の毎週土曜日(計7回)に型稽古1時間(極真の型を3回ずつ休みなし)+組手稽古(清水南道場生に協力してもらい1分間40セット以上、休みなし)を行いました。1月末にこの稽古3回目を行ったとき、組手中に左足中指を骨折。医者からの診断は「全治3か月」、心の中で「遅い!!」と叫びました。公認審査会まで4週間。通常の外科医ではテーピングで固定するだけ、毎週レントゲンを撮るだけ。すぐさま、自分が故障すると通院している治療院へ直行し、「4週後の公認審査を受けれる体にしてください!」と懇願。それからは治療院の先生と二人三脚の日々でした。先生調合の酵素による湿布を自分で作り、二時間ごとに夜も起き、貼り直し、10日で炎症がとれ、骨折の痛みもなくなりました。先生は「骨折しているのに痛みがないのは奇跡」と言ってました。この時に考えていたことは、けがが治らないのはわかっていることで、それともう一つ決まっていることは「公認審査を受けること」でしたので「怪我のため審査会はやめる」選択肢はなく、「今は治療することが稽古」だという事でした。
そんな時に海野師範から電話をいただき、「怪我や病気はないか?」と聞かれ「実は2週間前に骨折してしまいました」と答えました。海野師範は「それは杉本先生が稽古をしているから怪我をしたんだ。稽古しない人間は怪我も、何もしないよ。何もないまま公認審査会は受けれないものだ。」というお言葉をいただき、胸にジーンと浸み込みました。
審査会まで残り2週間、足の痛みは取れたが、今までやってきたランニングとサンドバック稽古はできない。何かないか?と思っていたとき、治療院の先生から「腹式呼吸法」を教えていただき、毎朝30分、目覚めに実行しました。この効果は自分でも驚くほどでした。身体全体が活気に満ち、息の上りが落ち着くのです。最初は20秒吐き続けるのも死ぬ思いでしたが、慣れてくると50秒吐き続けることができました。
もし怪我をしなければ、これに出会うことはなかったと思います。また、怪我をした直後は最低点まで落ち込み、公認審査会では完治こそしていないが、上り調子になれたこと、今思うと「怪我をして本当に良かった」ということです。そして、それまでに1年間コツコツやってきて良かった、ということです。ただそれも自分の周りに理解者・協力者があってのことは言うまでもありません。
焼津みなと道場から大勢の道場生を連れて稽古に来てくれた、田平先輩・吉永君、土曜日の稽古に付き合ってくれた沼津香貫道場の安藤さん、ありがとうございました。
公認審査会当日は自分でも不思議なくらい気負いもなく、自然体でした。ほどよい緊張感の中、基本、移動稽古、型、補強までできました。その時点で、身体に疲労感が蓄積し、それを回復させるため、会場の隣で10分間ほど腹式呼吸を行って、身体を整え直しました。 そして最後の40人組手。これまでの連続組手では必ず3〜4人目で「こんなはずでは」と感じるくらい急にきつくなりましたが、今回は不思議とそれはなく、同じ調子で進めることができました。BR> 1人目が宇都宮から来てくれた大柿さん、40人目が北九州から来てくれた清水さん、最後の清水さんは自分が緑帯だったころ大石道場に入門した弟弟子です。「先生の相手をさせていただくため」と来てくれました。二人とも、ありがとう。
審査会翌日の今思うことは、上記の通り、審査会当日の内容より、審査会前日までの内容の方が長く密なことです。終了後大石範士が言って下さった「この日に向けて1年間の稽古で自分の可能性が広がるし、確実に自分が変われるものです」。今の自分にとって、このお言葉が全てあてはまっています。
大石範士を信じ、海野師範から言葉をいただき、大石道場生の協力を得て当日を迎えられ、終わることができました。今日は、また、新たな一日の始まりです。昨日は雨でしたが、本日はきれいな晴天です。身も心も晴々しています。身体を一度整え、また稽古に精進し、自分がもっと変われればと思っております。
稽古を見守ってくれた青木さん、自分の生活を支えてくれている家族、そして一緒に稽古で汗を流してくれた清水南道場生及び協力の父兄、この紙面をお借りして感謝を申し上げます。ありがとうございました。


押忍