繁田 幸佑 初段(静岡竜南道場所属)
〜2007年12月02日取得〜


「初心の気持ちをもって」


 この度は昇段の許可を頂きました事、心より御礼申し上げます。
 思い起こせば、約五年半前、大学に入学し、「極真空手」をやっている友人に「やってみないか」と誘われ、ただただ強くなりたいと思ったのが、極真空手を始めるきっかけでした。中学、高校と部活動をやっていた私としては、体力に自信もあり、簡単な気持ちで入門しましたが、すぐに身をもって甘い考えであると知らされました。
 基本稽古や移動稽古では、先輩方に全くついていけず気分が悪くなったり、組手稽古では腹や足を効かされ、下がってばかりの日々が続きました。
 そんな中、入門して三ヶ月程で始めての試合に出させて頂く事になりました。
 そこで忘れもしない、生まれて初めての試合の主審が恩師である海野先生でした。
 当時、白帯であり始めての試合で緊張して、何をどうすればいいのかわからない私に「絶対に下がるな。いつもどおり前へ行け」というアドバイスを頂き、「やるしかない」という思いを持つことができ、何とか延長で勝利することができました。当日はベスト8の結果でしたが、不器用で何をやってもうまくいかない私には大きな自信を持つ事が出来ました。そして、その自信をきっかけに「こんな自分でも一生懸命頑張れば、結果がついてくるのだ」と思い、今日まで努力をし、稽古を続けてくる事ができました。

 そして、締めている帯もいつのまにか茶帯になり今回の昇段審査を受けさせて頂く事となりました。型の審査では多くの先輩方にアドバイスを頂き、何とか合格を頂く事ができました。自分だけの稽古では全く考えられない事でした。
 そして、平成19年12月2日、十人組手を受けさせて頂く事になりました。試合とは違う緊張感でどのように稽古していいのかわからず補強や走り込み、ミット稽古などを繰り返す日々が続きました。そして、前日まで日は流れ、いよいよ本番を迎えるのみでしたが、私の気持ちは初めて試合に出場したあの日のように、緊張でどうすればいいのかという状態に陥っていました。そんな中、海野先生から一本のお電話を頂きました。
「極真魂を見せてみろ」   その一言のお言葉でした。
 私としましては、どんな言葉よりも気持ちを奮い立たせるお言葉でした。そして、白帯の時の「やるしかない」という気持ち、「初心の気持ち」を再認識させて頂けるお言葉でした。
 たとえ十人目が終わりそのまま倒れようとも、たとえ全身の骨が折れようとも魂を見せるしかないという気持ちになる事が出来ました。
 そして十人組手当日、大きな緊張の中、私の順番になりました。
 「極真魂」という気持ちを噛み締め、一人目から全力で向っていきました。
 五人目、六人目・・・と進んで行き、中盤でダメージを受け、苦しい場面もありました。
しかし、「極真魂」という言葉と後方からの大声援のおかげで、十人目まで来る事が出来ました。
 最後の十人目の相手を前にして、「絶対に下がらない。魂を見せる」と再認識し、噛み付く気持ちで向っていきました。
 十人組手を終え、大石代悟主席師範に握手をして頂きながら「よく頑張った」とお言葉を頂いた時は、感無量という言葉でも表現しきれないほどの感動がそこにはありました。
 そして、海野先生から「よくやった」と言われた時は「押忍」としか返事をお返しする事しかできませんでしたが、今までのどんな「押忍」よりも、感謝の気持ちを表す言葉でした。
 これから黒帯を締めさせて頂く以上、大きな責任と重圧がかかってきます。これまで先生や先輩方が築き上げてきたものを自分が壊すわけにはいかない。誇りと自覚を持ち、黒帯を締めていくしかない。そう自分に日々言い聞かせています。
 大石代悟主席師範が常々仰っておられる、「家庭、職場において信用、信頼される人間に。」その言葉を実践し、道場では極真空手大石道場竜南道場の黒帯の一人として、責任と黒帯という重圧を感じ、道場を支えていきます。

 最後にはなりましたが、昇段を許可して下さった大石代悟主席師範、ここまで育てて頂いた海野先生、今回の昇段審査に多くのアドバイスを下さった道場の先輩方、夜遅くまで稽古に付き合って頂いた道場の方々、そして十人組手当日に多くの声援を送ってくれた少年部、保護者の方々、他道場の先輩方、皆様には心より御礼申し上げます。
 黒帯というスタートに立ち、これからもより一層空手道に精進していく所存であります。

押 忍