桑原 敏彰 初段(沼津総本部道場)
〜2016年03月13日取得〜


 
この度は公認審査会を受審させていただく機会を与えて下さりありがとうございました。世界総極真大石代悟範士をはじめ最後まで受審者を見届けて下さった海野師範、柴田師範、長澤師範、他府県よりお集りくださいました先生方、大石道場の先生、先輩方に厚く御礼申し上げます。また大石道場生、ご父兄の皆様、熱いご声援を頂きありがとうございました。

 あることがきっかけで何か全身運動になることがしたいと思ったのが私の極真空手入門動機でした。大石道場のホームページを見つけ大石範士が書かれている稽古日記を読み漁り一度見学をしてみようと恐る恐る道場へ行ったところ、指導をされていた2段の黒帯の先輩が丁寧な対応で道場内へ案内してくれました。稽古が終わった後、指導員の先輩は『いかがでしたか?』と感想を聞かれました。年齢のこと、稽古時間、システムなど色々説明を受け帰り際に『またいつでもいらっしゃって下さい。続けられる続けられないは気にせずやりたいと思った時が入門の時なのですよ、体験入門もありますからね』と笑顔で見送ってくださいました。再び体験入門のため道場に行ったところ前回対応してくださった先輩が『以前見学に来られた方でしたよね』と覚えていてくださり、一般部の稽古に体験入門させてもらうことになりました。

 しかし稽古についていけず途中何回も休ませていただく情けない体験入門になりました。厳しいと思ったが道場の雰囲気、指導員の先輩方の対応などからとにかく入門してみようと決心しました。稽古はとても大変で基本稽古で気持ち悪くなり、初めの1?2ヶ月は度々稽古途中にリタイヤし回復しては再度稽古に入る状態が続きました。『手を抜きながら稽古するより何回抜けてもいいから全力でやったほうがいい』と先輩はアドバイスをくれました。

 次第に稽古について行けるようになり少し道場に慣れかけた頃、突然の緊張が私を襲いました。いつものように道場に行くと大石範士が範士室から出てこられました。初めて大石範士との出会いに思わず不動立ちになり『押忍!』と挨拶をしたところ『桑原さん、稽古やってますか?頑張って下さいね』と声をかけて下さりました。初めてお会いしたのに私の名前を覚えておられることが大変嬉しく思いました。何ヶ月か過ぎ一般部の指導を大石範士が行うことになり、範士は準備運動、立ち方、基本動作、呼吸法、移動稽古、型、組手すべてに意味がありどれが欠けてもダメであることを説明しながら指導をして下さりました。

 また稽古に決して選り好みをしない、稽古に疑いを持たない、倒れてもいいから全力で行うことを稽古中にも注意されていました。99%の力があっても1%の不安があれば人の心は1%の不安が勝ってしまう、100%の力をつけるには100%以上の力で臨まなければならない、自分を大切にする事はより自分を鍛える事である、自分を甘やかす事じゃないなど稽古が終わった後も色々な話をして下さりました。月日が経ち帯に色が付き茶帯に昇級し、いよいよ黒帯にチャレンジと思い浮かべた事も有ったが想像だけであまり現実味がありませんでした。

  しかし昇段審査を受審する覚悟を決めなければならない時が来ました。2015年東日本大会会場での大石範士の一言でした。『茶帯になって何年だ?来年の春に公認審査会があるから桑原さんも挑戦してみたらどうだ?もう覚悟を決めて挑戦してみろ』との勧めでした。 『押忍!』と返事をしたものの果たして自分に昇段審査を乗り越えられるのか?まだ自分に昇段審査は早いのではないか?と一瞬の躊躇もありました。漠然とした感覚で稽古を行っていたのですが、秋ぐらいに再び大石範士は来春の公認審査会の受審の勧めて下さいました。『頑張れますか?厳しいですよ』と言われましたが決心がついていたのではっきり受けますと即答しました。

 とにかく頑張ろうと日々の稽古、基礎体力、ランニング、サンドバックの打ち込み、型の反復稽古、特に型は寺本茂先輩、日下部尚弥、尚人先輩に指導していただき稽古後にも時間を割いて教えていただきました。焦らずもっとゆっくり、ここはもっと力強くなど極真の型の意味など覚えの悪い私に丁寧な指導していただきました。仕事の関係で稽古に参加する事が出来ない日が続き焦っていたのですが、不運にも審査から1ヶ月前位に稽古中に両膝を痛め特に右膝に水が溜る状態になりました。右足をかばいながら稽古をしていたところ今度は右足の肉離れを起こし途方に暮れた日が続きました。騙し騙し稽古を続け調子がいいと思い型稽古で前蹴りを出したところ、再び肉離れを起こし右膝裏に内出血を起こし紫斑が浮かび出る状態になってしまいました。

 結局審査会までに治る事が無く右足をテーピングなどで庇いながら審査会に参加することになりました。どこまで動けるか?合否は考えず日々の稽古の姿を見てもらうことだけを考え審査会に挑みました。準備運動、基本稽古、型、補強と進んで行き最後に組手が始まりました。組手では緊張したためか3人終わった後、酸欠で目の前が白くなっており5人終わる頃にはもう無理ではとリタイヤも頭に浮かびました。『こんなはずでは…』と思ったが体が動きませんでした。尚弥先輩の激も聞こえていましたが体がついていかない自分がいました。

 範士の言葉、指導してくれた先輩方ことが瞬間的に頭に浮かび『苦しい時に苦しい顔をしない』、『苦しくなるために稽古をしているんだ!』との稽古中の言葉や今まで指導して下さった先輩方の気持ちは裏切れないと最後までやり抜くことを思い非常に苦しかったが気が付けば10人組手が終わっていました。最後はただ打たれる、蹴られるの一方的な攻撃を受けたのですが先輩の攻撃には頑張れ、後悔のないよう最後まで戦えと激が入っていることを肌身で感じました。審査会が終わる頃には会場全体が家族のような一体感が生まれていることに気づきました。昇級審査会では感じられない不思議な気持ちでした。

 この公認審査会に参加出来たことは非常にいい経験になりました。これからも初心に戻り、緊張感を持ち謙虚な気持ちで稽古を続け、自分に厳しくまた人に気が配れる大石道場の黒帯として恥じないよう精進していきたいと思います。これからも宜しくお願い致します。押忍