最初に今回、審査を受ける機会を与えて下さった大石主席師範に心より感謝申し上げます。
私が極真大石道場に入門させて頂いたのは今から25年前、高校1年の春でした。
中学3年の時、友人と2人で下校途中に他校のサングラスとマスクをした4人組の生徒に囲まれ
「金を出せ!」と脅されました。相手の凶器を見た途端に膝がガクガク震え、なす術もなく大切なおこづかいを
盗られてしまいました。帰宅してから、理不尽な行為に対する激しい憤りと、自分自身の“弱さ”、“情けなさ”に
対して自己嫌悪になりました。「人間はイザという時、強くなければ自分が正しくても何の価値もない。」と
嫌になるくらい身にしみて感じました。
それからというもの、“強くなりたい”と言う思いは日に日に強くなっていきました。ある日、学校の近くに
日本人の選手が大きな外人を廻し蹴りで蹴っているポスターを見て衝撃を受け、入門を決意しました。(当時は
その方が大石師範とは存知上げませんでした。)
入門させて頂いた最初の稽古の時には、基本稽古でめまいと吐き気がして最後まで続けられませんでした。
そんな私に対して静岡登呂道場の先輩方は本当に温かく、技や精神的な事についても親切に指導して下さいました。
その行為に何度も、心から感動させられました。
大石主席師範にも「弱くても、しっかり稽古をすれば必ず強くなれる。」という御言葉を頂き、心の底から
やる気が湧いてきました。
黒帯の先輩方はすごく強いにも関わらず、腰が低く、言葉使いも美しく、本当に温かく気品と威厳がありました。
子供ながらに「自分の求めていたものはこれだ!」とピンと来たのを今でも覚えています。
それから、いつも私が納得いくまで、夜遅くまで熱心に稽古を指導して下さった朝波先生や、日曜日に友人と一緒に
自宅で稽古をつけて下さった海野先生など今でも感謝しています。
そういう素晴らしい環境の中で高校時代、私は極真空手が出来たことが、その後の人生においても大きな財産になりました。
本当に感謝しております。
数年前、東京に大石道場が出来ることを知りました。すぐに私は「もう一度、空手をやろう。」と思い、再び入門させて頂きました。
さらに大石主席師範が静岡から月に1回東京に来られ、直接稽古をつけて頂ける願ってもない幸運にも恵まれました。
公認審査会の2週間前、稽古の時に大石主席師範から「鹿島君、その型では絶対に昇段は無理だ。」と皆の前で厳しいお叱りを
受けましたが、稽古が終わった時に「あと審査会まで2週間あります。人間は3日あれば変わる事が出来るから頑張りなさい。」と
励ましの御言葉を頂きました。
大石主席師範に許可を頂き、審査会の前に総本部道場で1週間、稽古をさせて頂くことになりました。当時は不安と焦りが
増すばかりで、どうして良いのか分からず、心はどん底状態でした。そんな折、芹澤事務局長が本当に忙しい中、毎日のように
昼間1〜2時間道場に来て下さり、マンツーマンで型をご指導して頂きました。
私のひどい型を太極Tから十八まで、十数個の型についてひとつひとつの技の解説、型の意味、実戦での応用の仕方などを丁寧に
分かりやすく教えて頂きました。
毎回、芹澤事務局長が道場に入って来られると、道場に緊張感が生まれ、稽古前に心に抱いていた雑念や迷いがウソのように吹っ切れ、
心が前向きになりパワーが湧いてくるのです。一人で稽古している時とは比べ物にならない位、上がらない脚が高く上がったり、
技のスピードが増したり、いつもより体が動くようになったりと本当に不思議でした。
また、型の稽古が終わると松田先生や安藤先輩の香貫道場にも稽古に行かせて頂き、型を何度も何度もチェックして頂きました。
このような中で、私の心の中に少しずつ光明がさして来て希望が湧いてきました。型の意味を深く知れば知るほど、いかに型が大切で
重要であるかが分かってきました。実戦での複雑な足の動きや、突きや蹴りを出す時の軸や重心の安定は移動稽古や型の稽古でしか
身につかないのです。いくらバーベルを使って筋肉を大きくしても、その部分の筋肉のパワーが増すばかりで、筋肉と筋肉のつなぎ目の
筋を同時に鍛錬しなければ動きの中に生かす事はできません。インナーマッスルと呼ばれる細かい動きをしたり、スピードに関係ある筋肉(筋)
は自分の体重で鍛錬しないと発達しないのです。つまり移動稽古や型をやり抜く事が一番重要な事なのです。また、基本を疎かにして
シャドーやミットをいくらやっても、その人の技は散って行くばかりです。基本を徹底してやらないと“理にかなった動き、技”を
体得する事は絶対に無理です。移動稽古や型で練った、しっかりした下半身(土台)がなければ、どんな技も生かすことは出来ないです。
大石主席師範がいつも仰るとおり、「三戦立ちで丹田に力を入れ、軸を作り、脇を締め、当たる瞬間に力を入れなさい。」の基本稽古から
始まり、蹴りの蹴り方、移動稽古、型などについて教えて頂いた事をもう一度、初心に返って学び直す良い機会が出来ました。私の
空手に対する浅い、薄っぺらい考えが今回の“型の稽古”でいかに間違っているかを気付かせて頂くと同時に何も出来ていない自分がそこにいました。
審査当日、何人かの先生、先輩方から「型が良く出来ていたね。」と言われ、心から嬉しかったです。今回、私は大石主席師範のご厚意や
芹澤事務局長の熱心なご指導、本部道場の皆様や松田先生、安藤先輩など香貫道場の皆様の応援、ご協力無くして昇段することは
絶対にありえませんでした。本当にありがとうございます。
今回、昇段させて頂き、やっと空手の入り口に少し近づく事が出来ました。本当の黒帯になるには、今まで以上に稽古に専念しなければなりません。
この素晴らしい極真空手が一人でも多くの人に知ってもらえるよう、これからも努力していく事が自分の使命だと思っています。
最後に、大石主席師範、芹澤事務局長、松田先生、安藤先輩、総本部道場、香貫道場の皆様、各先生方、応援して頂きましたご父兄の方、
道場生の方、友人、家族、そして高校時代から現在までいつもご心配をお掛けしている朝波先生、本当にありがとうございます。
これからもご指導の程、よろしくお願い致します。
押 忍
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