狩野 央康 参段(静岡竜南道場)
〜2008年12月7日取得〜

この上ない経験

 とても不思議な、奇妙というに近い感覚でした。連続組手としては3度目だとしても、

三十人組手を控えての私自身はこれまでになく充実していて、全く緊張というものを覚えず、かといって集中力に欠くのとも違う。今すぐ闘いたいと急くのでもなく、ただ淡々とその時がくるのを待っておりました。むろんそのような感覚ははじめてのことで、例えると、音もなく静かに燃える青い炎のイメージを思っておりました。

 試練は人を成長させてくれます。この1年は色々な面で試された一年でした。改めて多くの事を考えさせられ、考えのまとめも追いつかぬままに行動してみたりと、支離滅裂と試行錯誤を繰り返し、答えを探し続けるなか失敗と反省ばかりを重ねてきたように思います。二十人組手の時、命果ててもという覚悟で臨みました。今回はどうか。

 今回、懸けた命は必ず勝ちとって生き残る、という思いで臨みました。自然とそう思えたので、これは正しかったかと思うことにしています。一方で、いつも変ることなく、否、より強力に私の背に声援を送ってくださった道場生、ご父兄の支え。そして海野孝先生の存在。そもそも、私の空手人生の転機は海野先生の三十人組手をみてからのこと。今回海野先生は直前、私にそっとご教授されました。

 「狩野君、三十人組手は静かなる闘志、だよ。」と。

 いつもながら海野先生のその時々の言葉にはピタリともドキリとも来るものがあり驚かされます。さらにその師である大石代悟主席師範は言うに及びません。海外指導のお手伝いなどをさせて頂く機会あるごとに強く感じます。この師弟の系譜のもとに自分があることを誉として、先生と呼ばれるに恥じない人間に。考え方、ことば、行動、習慣、品格を磨き、道場という生命体の運命の責任を全うしうる人間に。守りに転ずることなく攻め続けてまいります。

 最後となってしまいましたが、折々に素晴らしい機会を与え続けてくださる極真空手と大石代悟主席師範。そして適宜適格な助言をくださる海野孝先生。対戦相手をして下さいました諸先生、先輩方。応援くださいました道場生、ご父兄、そして家族に。心からの感謝を申し上げます。おかげさまをもちまして、魂の燃焼と充実というこの上ない経験をさせて頂きました。ありがとうございました。益々精進してまいります、厳しくご指導を賜りたく存じます。

                                               押忍