柴田 自由 六段(静岡南道場)
〜2014年03月02日取得〜

 


 
空手の世界に身を投じて40年、極真空手に入門して30年の月日が流れました。

 その時々に試練が訪れ、その時々に何とかそれを乗り越えてきました。

 小学生時代に入門したのは剛柔流系の道場でした。 当時、出身地の京都には極真空手の道場はありませんでしたが、私が小学生のころから徐々に極真空手はその名が世間に知れ渡るようになっていきました。 ブルースリーの映画や故大山倍達総裁の半生を描いた「空手バカ一代」の漫画の影響もあり、日本中に格闘技ブームが巻き起こりました。 そういった背景もあり日本中・世界中に極真空手の道場が開設され始めたころでした。

 その後、中学、高校、浪人を経て、大学生になった頃には京都にも極真空手の道場が出来ていて、そこに入門しました。 極真空手の稽古は厳しいものでした。 京都でお世話になった師範も世界大会に出場経験のある方で指導力には定評があり大きな大会出場を目指していた私はとても厳しく指導をしていただきました。 私の求めていたものがそこにありました。

 その後、静岡へ移転し、大石代悟最高師範の指導を受けるようになりました。 大石最高師範の存在は小学生の時から知っていて憧れていましたので指導を受けられることを光栄に思っていました。 最高師範は世界大会での実績もお持ちで、その素晴らしい蹴り技は大山総裁をして「世界一」と絶賛されていたので、指導を受け、お声をかけていただき、近くでその動きを見られるだけで「極真空手をやって良かった」と実感していました。 最高師範の指導は奇を衒ったものではなく、徹底的に基本動作を反復するというもので、改めて基本動作の反復の大切さを教えていただきました。

 そんな私も選手から指導者に変わっていきました。 指導者になり徐々に年齢を経るにつれ最高師範の話されていることが少しずつ理解出来るようになっていきました。 当たり前ですが「継続して稽古することの大切さ」や「自分を大事にするということは自分を磨くということ」「稽古は出直しとやり直しの繰り返し」など大事なことをたくさん学ばせていただきました。 入門当初は「あの厳しい極真空手だ。この中でなんとか2段になれれば自分も自信が持てるだろう。」と一生懸命稽古してきましが、そんな私がいつの間にか3段、4段と昇段し、5年前、50人組手に挑戦しました。 そして、分不相応ですが、師範という立場になってしまいました。 ただ、思い返すと50人組手では自分の思い描いている組手や立振舞が出来ませんでした。 一応は「やり遂げた」という満足感はありましたが、何か自分の中でやり残したような釈然としない気持ちがありました。 「次のチャンスはあるだろうか?」 「いや、もう無いかもしれない…」 「もし、次のチャンスが巡って来たとき、自分は動けるのだろうか?」 「そこまでテンションを高められるだろうか?」 そんな不安な気持ちで普段の指導や稽古を続けてきました。

 そんな中、今回、最高師範から受審を勧めていただき、前回の反省を含めて稽古に取り組むことを決意しました。 昨年は海外遠征中に肉離れを起こしたり、古傷の左膝の調子も思わしくなく、若いときのように一気に詰めた稽古をすることは出来ません。 その代わり、毎日少しずつ、疲れを溜めすぎないような形で稽古を進めました。

 今回の審査会に向けての稽古に入ったときに実感したことがあります。 それは、師に導いてもらうことの大切さです。 武道の世界は縦の関係です。 その昔、大山総裁は自分の部屋に弟子を呼び「君、出来るかね?」と聞いたそうです。 そして、弟子が「何をですか?」と聞き返したら「もう下がっていい。」と言われたそうです。 逆に「押忍、出来ます!」と答えた弟子には重要な仕事や新たな試練を与えてその弟子の力をさらに伸ばしていったと聞いています。 内容、理由の如何を問わず「やる!」ほうを選べるかどうか…。 腹の括りとはそういったものだと感じました。 私も今回の審査会ではそういう気持ちになりました。 最高師範から「柴田、60人だよ…」と…。 出来ない言い訳をすればいろいろあります。 膝が痛い、腰が痛い、時期的に忙しい…キリがありません。 また、もし、私が一人親方のような立場なら、自分自身の意思で果たして60人に挑めたかどうか…。 多分、無理だったでしょう。 もし、そんな状況で挑戦したとしても「なぁなぁ」のいい加減な60人組手になってしまったでしょう。 師からの導きがあってこその60人組手だったと思います。

 若い時なら「俺が!俺が!」と思っていたかもしれません。 しかし、年齢を経て分かることがたくさんあります。 今回の審査会はそういったことに気付かせていただいたいいチャンスだったと思っています。 奇しくも今回、自分の生徒と一緒に受審することになりました。 少しだけですが一緒に稽古しました。 ほんの少しかもしれませんが自分の取り組み方を見て、何かを学んでくれればいいな…と思いました。

 今回の昇段審査を勧めていただき、最後まで見守っていただいた大石代悟最高師範、本当にありがとうございました。 一緒に受審することになった海野孝師範、自分よりも年長でさらに精進されている姿に力をもらいました。 自分の都合に合わせて稽古に付き合ってくれた橘直人先生、同郷ということもあり、話も合い、稽古以外にもいろいろとお世話になりました。ありがとう。 朝波師範、田原師範、長澤師範、見守っていただきありがとうございました。 その他、県内外の多くの師範・先生方や組手の相手をしてくれた多くの仲間にも感謝しています。ありがとうございました。 そして、静岡南道場の道場生と保護者の皆さん、応援ありがとうございました。

 微力ですがこれからも空手を通して芯の強い、優しい心を持った道場生を育てたいと思います。 そして自分自身も成長して行きたいと思います。

  押忍