守川 仁 初段(竜南道場)
〜2016年08月07日取得〜


 「スタートラインに立つ」

  この度は、公認審査会、夏季審査会を受審させていただきありがとうございました。
 自分が大石道場に入門したのは、年中の6月でした。最初は自分の意思で始めたわけではありませんでした。体を動かすことが好きだったのと、両親が空手を習わせたかったことがきっかけでした。入門したての頃は落ち着きが無く、周りの先輩方の動きについていくのに必死でした。初めて試合に出た時、自分の中で勝敗というものがはっきりとわかりました。練習をしなければ勝てない、努力をしなければ負けるということを学びました。
 自分が青帯の時に竜南道場へ移籍しました。これが海野師範との出会いでした。自己紹介の時に師範に「こんなにしょぼくて大丈夫なのか?」と心配されたことを今でも覚えています。また、竜南道場生の稽古に対する姿勢や心構えに衝撃を受けました。小学校のうちは、組手の試合で1度も入賞することができませんでした。同じ道場で入賞している同級生の姿を見ると、とても悔しい気持ちになり次は勝ちたいと思いました。その一方で、もっと練習しなければいけないのか嫌だという気持ちもありました。
 中学生になると、部活や勉強との両立が難しくなり空手を辞めていく人がたくさんいました。小学校の低学年の時から一緒にやっていた同級生たちも次々に辞めていきとても寂しかったです。師範から「男子よりも女子のほうが強いから残る」と言われた時には何も言えませんでした。しかし、自分はその時「絶対に辞めてたまるか、俺が筆頭になってやる」という強い気持ちを持ち、自分がやらなければ後に続く人たちに示しがつかないと思いました。部活との両立は大変でした。遅い時間に終わり、それからの稽古はとても辛かったです。しかし、これは自分一人では無く共に汗を流す仲間がいたからここまで続けて来られたのだと思います。一人だったら諦めている事も、仲間がいるから、同じ苦労をしているから、自分だけが諦めてはいけない、負けるもんか、こういった気持ちを呼び起こすことが出来ました。一緒に頑張ってきた仲間には本当に感謝しています。
 自分が中学3年生の時に、公認審査会で海野師範が六十人組手を行う事になり自分たち中学生がセコンドをやる事になりました。一番近くで師範の六十人組手を見ているだけでなく、一緒に戦うんだという気持ちでセコンドをやりました。自分を含め、中学生全員の目にしっかりと師範の「諦めない心」「極真魂」を焼き付けました。言葉では表せないメッセージを受け取ると同時に、何としてでも今いる中学生を一人でも多く残るようにもっとしっかりしなければとても見本にならないと改めて心から思いました。言葉では「部活と空手を両立させます」とは言えますが、今まで結果として残る人はほとんどいませんでした。今は中学生も少しずつ残るようになってきているので、この流れを絶やしてはいけないと思い自分が率先してやることに意味があり、それに続く後輩たちもいるんだという責任の重さを感じました。
 高校に入学すると、バスケ部に入部しました。中学校とは比べ物にならない程忙しくなり、両立をしようとしましたがなかなか時間が取れなくなり、空手とは少しずつ遠ざかっていきました。そんな中、2016年1月7日の初稽古で大石範士から型の世界大会団体メンバーのお話を頂きました。次の日から部活を辞め空手一本にする覚悟をしました。この時から、また自分の空手人生が始まったと思っています。公認審査会で型を、夏季審査会で組手を受けることが決まり、1月から沼津総本部道場に出稽古に行かせて頂くようになりました。範士直々の指導という貴重な時間を過ごすことが出来ました。また、多くのことを学ばせて頂きました。公認審査会は狩野先生も受審されると聞き、とても心強く思いました。
 公認審査会は始まるとあっという間という感じでした。ただ、十人組手がもう少し出来たのではないか、という心残りもありました。そして、8月7日の夏季審査会では全てを出し尽くしてやるという気持ちを一層強く持つことが出来ました。 今回十人組手をやるのは自分だけだと聞いてから、夏季審査会までの1週間はとても早く感じました。今までの人生の中で経験したことの無いほどの緊張をしていました。そんな時に、師範、先生方、先輩方からは「最初から全力でいけ!途中で倒れてもいいから力を余すな!」と激励の言葉をいただきました。3月に受審させて頂いた時とは環境も違い、想像以上に苦しく大変なものでしたが、色々な方々の応援やアドバイスのおかげで自分の全てを出し切って最後までやり抜くことが出来ました。自分を支えて下さる方々の応援があったからこそだと思います。
 最後になりますが、ここまで自分がやってこられたのは、大石範士をはじめ、海野師範、狩野先生、先輩方、道場生また父兄の皆様、幼年の頃から支え見守り続けてくれた両親のおかげです。ありがとうございました。 大石範士が日頃から仰られている「黒帯がゴールではない」「黒帯は個人のものではない。個人の記念品にしてはいけない」ということを肝に銘じ、向上心・責任感を持って取り組んでいきたいと思います。また、海野師範が以前から仰られている「最低十年、最低黒帯になるまではやめるな!!」「黒帯になるまでは、自分にとってマイナスなことを言う人の言葉は右から左に聞き流せ!」「黒帯になったところからようやくスタートラインだ!!」ということをもう一度頭に入れ、初心を忘れずにスタートを切りたいと思います。黒は何色にも染まらない色(心)、そして金筋が筋金入りを示す黒帯だということを空手を通して学びました。これからは大石道場の黒帯としての自覚を持って稽古に精進していきたいと思います。本当にありがとうございました。これからも宜しくお願いいたします。                                          押忍