「君は少年部の組手を見ていなかったのか」
息が上がり後半は立つだけで精一杯、不甲斐ない組手を終えた直後に、最高師範の雷鳴の如き声が響き渡ったのは
自身初の昇級審査での事。
受審の帰路、皆の士気を下げてしまったと自責の念に駆られる私に、先輩方は「消極的にならず稽古を重ねましょう」と
言葉少なでした。
あれから15年、転勤もありましたが現在都合3度目の道場稽古に参加させていただく私に吉松先輩から受審の案内が
あったのは昨春のこと。
「奥さんは皆に知られている大富さん」
「奥さんと子供は試合で結果を残している大富さん」
「スタミナが無さすぎる大富さん」
私の名前に寂しい冠が定着して久しく、払拭するに良い機会だと受審を決意し、時に心折れそうになれば「お菓子」や
「おもちゃ」だのの甘言で子供をロードワークに付き合わせ、受審まで不安を抱きながら自分を鼓舞する日々を過ごす
こととなりました。
迎えた受審当日は快晴、霊峰富士に笠雲、JR東日本は普段以上に営業努力されている様で列車遅延は無く、
周りの環境までも私の背中を押してくれていると勝手に思い込み、不安は消えむしろ程よい緊張感のまま、
始まりから終わりまで熱気の中に身を置くことが出来ました。
最後に。
受審の機会を与えてくださった大石最高師範、胸を貸してくださった先輩方、ユーモアを交え緊張を解いてくださった
伏見先生、檄を飛ばしてくださった杉本先生、栃木ならびに東京支部の先輩、後輩、家族。
大きな勇気をいただけたことを心より感謝いたします。
「消極的にならず稽古を重ねましょう」
あの時先輩方の助言がなければ今日まで空手を継続できなかった、と今は信じて疑わず、今後は後輩と共に共有したいと考えています。
引き続きまして御指導賜りますようよろしくお願いいたします。
押 忍
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