この度は、昇段審査という私にとって生涯忘れ得ないであろうすばらしい機会を与えてくださり、誠に有難うございました。
強さとは何だろう、強いというのはどんな気持ちなのだろう。思えば少年の頃から私の心の中にはこの疑問があった様に思います。
大人になりいつしか消えるのだろうと思っていたものの、時が経つにつれより大きくなる疑問に、何とか答えを見つけようと思い立ち、
極真会館に入門しました。21歳の夏の頃で他の選択肢はあまり考えていませんでした。「強さを求めるなら空手だろう、
空手ならばキョクシンだろう。」そんな単純な考えで入門したものの、初めての稽古の日、道場内に漂うただならぬ緊張感と殺気に
近いものまでを感じ、すっかり怖気づいたのを今でもはっきりと憶えています。
その後仕事の忙しさにかまけて道場への足も遠のき、何かをやり残したという意識を引きずったまま10数年が過ぎました。
そんな時、大石師範が直接指導してくださるセミナーが宇都宮で行われていると聞き、近くのスポーツセンターまで足を運んだのが、
再スタートを切るきっかけとなりました。半信半疑でしたが、行ってみるとそこにはまぎれも無く大石師範がいらっしゃり、
映画や本の中でしか見た事の無かった私は大変な感動を覚えました。すばらしい成績を残したスポーツ選手でも、引退した後は
すっかり体が動かなくなり、別人の様になってしまうという姿をたまに見かけます。しかし、その日見た大石師範は、
衰えるどころか動きに益々磨きがかかり、華麗な足技も健在で、素人の私が言うのも何ですが、正に「技」をやっているという感じでした。
こちらは汗をびっしょりかいているというのに、涼しい顔で2時間指導されていました。
「はあはあ言ってやっているうちは技じゃないよ」という総裁の言葉が師範の体を通じて聞こえてくる様で、
強いというのはこういう事なのかという考えが一瞬頭の中をよぎりました。不完全燃焼でくすぶっていた、強さに対する疑問が再び
頭をもたげ、それからの5年間、仕事や家庭の忙しさを理由に稽古を怠らない様自分を戒め、答えが必ずあると信じ私なりに
努力してきました。
こうして無事昇段審査を終えた今、もちろん強さに対する答えは見つかっていませんし、むしろ自分の甘さや足りない部分が
はっきりと見え、気を引き締める良い機会となったと感じております。一度はあきらめかけた空手ですが、5年前に再度門をくぐり、
幸運にも初段を授かり極真の玄関にまで入る事ができた。ここから本当の修行が始まるのだという事を肝に銘じ、極真の黒帯に恥じぬ様、
また後輩達の良い手本となれる様、より一層努力、精進していきたいと思っております。
最後になりましたが、ご指導いただいた大石師範はじめ諸先生方、先輩方、応援していただいた道場生の皆様に、
心からお礼と感謝の気持ちを伝えたいと思います。ありがとうございました。
押 忍
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