竹内 史江 初段(福井 今城道場)
〜2013年03月03日取得〜

この度は、公認昇段審査という機会を与えて頂き、本当にありがとうございました。

  私にとって、この昇段審査は一人では辿り着くことはできないものでした。
 2年前の夏期合宿の初日、基本稽古が始まった途端、めまいと吐き気が治まらず、何もできないまま二日間の稽古を断念しました。
 福井に帰ってからすぐ病院に行き診察を受けると、2か月の入院と、長期療養、「もう治りません」と医師から診断結果を言い渡されました。
 空手もこれからの人生も諦めました。外見の変貌があまりにもひどかったため、今城先生や道場の方の心配をよそに誰にも会いたくないとわがままを言い、毎日泣いて過ごしました。
 しかし、たくさんのメールを頂き、休日にはお見舞いに来てくださり、励まされ、すべてを諦めていた心に、少しずつ、「退院したらまた空手を続けよう!」という気持ちが芽生えてきました。心が上向きになり、筋肉が少しでも落ちないように病院内をウォーキングし、医師から少し大人しくしていて!と注意されるほどでした。
そして、10日早い退院。なにより、道場の方たちと一緒に稽古がしたいと思いました。  退院後、医師から稽古の許可が出ないながらも、我慢できず運動量を少しずつ増やしていきましたが、体は動かず、体力は戻らず、つらく、情けなく、ため息の日々が続きました。
 
そんなため息が続いていた中で、海野師範から「『強さ』とは体が強いという事、健康であるという事です。」「どんな苦難にも真向勝負するという事。」「決断した時に、前の自分よりよくなる。」「黒帯からが、空手の本当のスタートラインです。」・・・ほかにもたくさんの胸が熱くなる言葉をいただきました。
 今城先生から、昇段審査をいつでも受けられるよう準備しておくようにと声をかけて頂きましたが、病気が完治せず、体も戻らず、今の私ではとても受けることはできないと思い、「押忍」の返事がなかなかできずにいました。
 しかし、海野師範からの「黒帯からが本当のスタート」に背中を押され、今城先生が声をかけてくださったということを信じ、当たって砕けてもいい!全力で受けよう!と受審を決心致しました。
海野一家の山本麻里先輩からも、「大丈夫だよ!みんなのために頑張れるんだよ!」といつも温かい言葉をいただきました。
審査会1か月前には海野師範、山本先輩、兵庫の吉崎代表が来て下さり、基本、型の指導をしてくださいました。

審査会当日は、福井から駆けつけてくださった道場生や保護者の方たち、静岡では大石道場の皆様から励まされ、少年部や保護者の皆様からも応援していただきました。緊張でひきつっている私に「大丈夫!大丈夫!」と大石道場の女子部の方たちが声をかけてくださいました。
審査が始まり、基本・型と進み、補強が終わった後には腕は上がらず、左膝も悲鳴を上げている中、組手を迎えました。
組手が始まり、必死で腕を上げ、突きを出そう、蹴りを出そうと思っても情けないくらい体は思ったように動いてはくれません。ただただ、周りの声を聞いて「前に出なきゃ!」と思いながら動いていました。後半、最後までできるのかな?と思ったことがありました。しかし、応援の声があちこちから聞こえ、胸に響いて、こんなところで諦めていては応援してくださっている方たちに申し訳ない!と、最後まで立ち続けることができました。
組手が終わり、大石最高師範、海野師範をはじめとする師範方に握手をしていただいて胸がいっぱいになり、その後の写真撮影では、応援してくださった皆様のおかげという思いで胸がいっぱいになり、涙が止まりませんでした。

7年前に白帯を締めた時、病気という思わぬ試練に耐えなければならなかった時、そしてこの昇段審査。これまで多くの方々に支えられて空手を続けることができました。 「黒帯からが、空手の本当のスタートラインです。」このスタートラインに立つこととなった今、心・技・体全てまだまだ鍛え直し、日々精進し、その中で苦しかった時に師範、先生、先輩方から教えていただいた精神を、後輩たちにしっかりと伝えていきたいと思います。
これまでお世話になりました海野師範、今城先生、先輩方、道場生の皆様、保護者の皆様、そして、わがままを許してくれる家族に心より感謝いたします。 これからも宜しくお願い申し上げます。


押 忍