今城 真治 四段(福井 今城道場)
〜2013年03月03日取得〜

 まず始めに、公認審査会という、このような機会を与えて下さった、大石代悟最高師範に心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。
  
 思えば3段の昇段審査に望んだのは、13年前の2000年3月で、福井県では初めての3段昇段審査でした。
 当然、福井県で30人組手をするのも初めての試み、相手になってくれる対戦者の人達も初めての中での昇段審査でした。私自身42歳の年で決意を新たに1年間をかけて体力づくりに励み、昇段審査に望んだ思い出があります。

 それから13年の月日が流れる中で、私にとっての空手人生は決して楽で順調な道ではなく、幾たびか公認審査に望むための準備は自分なりにしておりましたが、直前に断念しなければならない事情により、今後の昇段はほぼあきらめかけていた時でした。
 ようやく長いトンネルの出口が見え、昨年の11月についに公認審査を受審すると言う夢にまで見た許可をいただきました。
 切れかけていた気持ちに、再び大きな目標をあたえて頂き、その日から4ヶ月しかない昇段審査の準備期間に自分なりの稽古メニューを考え、忙しい仕事と道場稽古の合間に自主トレを再度開始しました。

 短期間での焦りもあったのか、12月・1月の雪の降る日であろうとランニングを中心にした走り込みを欠かさず行い、時間に余裕がある時には近くの山道の坂道ダッシュでスタミナ強化を繰り返し行いました。以前より右膝には故障があり手術の経緯もあったせいか、急激なハード稽古に無理が重なり、古傷の右膝に水が溜まりだし、正座は出来ず、歩くこともままならなくなり、蹴りの稽古どころか、型の稽古も出来なくなってしまい、整形外科の先生に相談した所「3月の昇段審査に望みたいのなら2月いっぱいは走り込みはおろか、稽古もしてはダメ、休養しなさい!」と言われ、不運な自分を愚かに思うばかりでした。
 
 そんな時に同じ様な経験をされている、海野師範よりアドバイスをいただき、焦る気持ちを抑え、出来ることだけをやる稽古に切り換え頑張れと激励をいただきました。  以前より、昇段審査の前には必ず静岡の海野師範の道場へ出向き型の仕上がりを見て指導頂こうと思っておりましたが、当道場毎年恒例の道場総会・交流戦が2月10日行われる時に、ご無礼を承知で海野師範に「もし宜しければ御来賓で総会・交流戦にお越しいただき、その時の前後かに型のご指導をいただきたいのですが?」と申し上げた所、快くお受けして頂くことができました。

 海野師範が来福された2月10日の当日は雪が降り積雪もあり冷えこみ、福井って寒くてすごい所だなと思われたことだと思います。道場総会・交流戦が終わり、今回当道場から昇段審査に望む、私他3人と道場指導員達の前で、その他道場生・保護者達の見守る中2時間以上に渡り、細かい動きまでご指導頂きました。海野師範と同行して頂いた山本先輩のお二人の素晴らしい本物の極真の基本・型を目の当たりにした道場生達は感激のあまり、稽古終了後サインと写真撮影の順番待ちが出来る程でした。遠路はるばる田舎の福井までお越しいただき、感謝の気持ちでいっぱいでした。

 その後、昇段審査会までの1ヶ月弱は、スタミナ稽古の走り込みは一切せず、補強と型の稽古中心に変え昇段審査当日を向かえました。

 当日の朝は意外と緊張もなく、前日も思ったよりゆっくりと寝ることも出来ての公認審査の会場入りでした。
 しかし、会場の雰囲気に気持ちが急変し極度の緊張感に襲われましたが、自分では平常心を言い聞かせおりました。そして、会場には福井から30名近くの道場生と保護者が駆けつけて頂き、心強いかぎりでした。

 スタミナ稽古も出来ないまま不安の残る受審になりましたが、目の前には大石最高師範、海野師範はじめ多くの師範方が見守ってくれている、そして多くの道場生達が応援してくれて居る事を念頭に置いて、平常心を心がけておりました。

 準備運動に始まり、基本稽古・型・補強と進みいよいよ40人組手を向かえ、自分本来の組手スタイルを貫こうと対戦者と向かい合い、とにかく間合いを一定に取り、攻撃をもらわないようにさばきながらカウンターを狙い、ダメージを受けない様に技を仕掛け前半は受け返しを心がけておりました。中盤にさしかかり自分のスタミナがまだ行けると判断し、攻撃中心の組手にと変えて行こうと思った時の出来事でした。中段突きを一歩下がって受けて踏ん張った瞬間に左足に激痛が走り審査会場内に大きな音で「パーン」、一瞬の出来事でした。

 まさかとは思いましたが、直ぐに起きあがり攻撃を続けようとした所、左足がスポンジを踏んでいるような現象で踏ん張れず転倒、「アキレス腱断裂」なんでこんな時に!
後20人との対戦が残っている丁度中盤でありました。
 普通なら立っている事も困難で直ぐに病院へ行く所でしょうが、直ぐに、左足首から膝までをテーピングで固定して再度再開。全く途中で連続組手を止めるつもりはなく、その後は、私の左足になって身体を支えてくれたのは間違いなく応援に駆け付けてくれた道場生達の応援があったからだと感謝しております。
 
 もとより今回の公認審査会に向けて命がけで稽古に取り組んできました。命をかけて審査に望んだ以上自分を見失う事はなく、常に対戦者から眼を離さず、一人ひとり必死の対戦になりました。これまでこの様な極限まで自分を追い込んだことは無く、苦戦の連続でしたが、今まで稽古してきた中での強い精神力を信じ、まずは自分に勝つと言う気持ちで何とか後半持ちこたえさせてくれました。これも道場生達の応援と、空手人生の中で今まで楽な道を選ばず、あえて苦しい道を選び自分なりに乗り越えてきたからこそ、今の自分の心を強くしてくれたのかも知れません。

 40人組手を完遂し、自分なりには少し心残りの組手ではありましたが、大石道場の応援してくださった沢山の方々の暖かい拍手が、やり遂げた達成感と、充実感で心を満たす事ができました。
 
 最後になりましたが、大石最高師範、海野師範はじめ各師範方から、良い試練の場をあたえて頂き、厚くお礼申し上げますと共に、大石道場全ての関係各位に重ねてお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
 今後も世界総極真福井県今城道場の代表として、今まで以上に真の強さと優しさを求め、極真の素晴らしさを今以上に普及発展させ、5段の昇段審査を次の目標に努力・精進して参る所存です。


押 忍